

漫画家、手塚治虫(1928〜89年)が、無免許の天才外科医の活躍を描いた漫画「ブラック・ジャック」の未完成原稿コピーが初めて見つかり、兵庫県の宝塚市立手塚治虫記念館で公開が始まった。
コピーは、漫画出版社「幻冬舎コミックス」(東京都渋谷区)の伊藤嘉彦社長(53)が、秋田書店(東京都千代田区)の新人編集者として手塚を担当した際、「初仕事の記念に」と保管していた。
手塚自筆のアシスタントへの指示なども残っており、同館は「制作過程をうかがえる貴重な資料」としている。公開は10月30日まで。
同館によると、漫画の制作過程で作家がアシスタントに指示する場合などに、しばしば途中原稿がコピーされる。
しかし、作業の混乱を防ぐため用済みのコピーは破棄され、原稿が完成すればコピーは残らないのが普通という。
見つかったのは「週刊少年チャンピオン」1979年4月30日号(秋田書店刊)に掲載された「虚像」という作品の未完成原稿コピー24枚(A4判)。下書き線のほか、「かなり広角に」などと背景を描くアシスタントへの指示が残る。
また、臓器や手術シーンのコマは空白になっており、医師だった手塚がリアルさを重視し、アシスタント任せにしなかったこともうかがえる。
伊藤社長は「漫画にかける作家のこだわりを感じてほしい」と話している。